今回は、大東市で施工した、H鋼と木矢板による土留め工事を紹介します。
この土留めは、隣地との境界付近にL型擁壁を施工するために設けたものです。
掘削後の見え高は約4m。隣地側には大きな蔵が建っていたため、地盤やH鋼のわずかな変化にも注意しながら施工を進めました。
今回の現場では、H鋼を7本建て込み、6スパンに木矢板を設置しています。
木矢板は、約4mを一度に掘削してから入れたのではありません。上から約1mずつ掘削し、その都度、木矢板の設置と裏込めを行いました。
土留めは、施工したら終わりではありません。施工中はもちろん、施工後も毎日状態を確認し、小さな変化を見逃さないことが大切です。
この記事では、H鋼の建込みから木矢板の設置、施工中に確認した地盤の開き、その後に行った補強と雨養生まで、実際の施工内容を紹介します。
今回の土留め工事の概要
今回施工した土留めの主な内容は、次のとおりです。
- 施工場所:大阪府大東市
- 施工目的:L型擁壁を施工するための土留め
- 土留め形式:H鋼と木矢板による土留め
- H鋼の本数:7本
- 木矢板:6スパン
- H鋼の大きさ:300×200程度
- H鋼の長さ:合計12m
- 見え高:約4m
- 根入れ:約8m
- H鋼の間隔:約0.9~1.2m
- 木矢板の厚み:約35mm
- 木矢板の幅:約200mm
H鋼は、4mの材料を3本つなぎ、合計12mにしています。
接合部分は、プレートとボルトで固定しました。
隣地との境界付近に土留めを設置
今回の現場では、隣地との境界付近にL型擁壁を施工するため、掘削が必要でした。
そこで、境界ぎりぎりの位置にH鋼を建て、その間へ木矢板を入れて隣地側の土を受ける形にしています。
隣地には大きな蔵が建っていたため、背面地盤やH鋼の状態を確認しながら作業を進めました。

H鋼7本を建て込む|土中の障害物に合わせて間隔を調整
H鋼は、当初約1m間隔で建て込む予定でした。
しかし、土中に障害物があり、予定していた位置へ設置できない箇所がありました。
障害物を避けながら位置を調整した結果、実際の間隔は芯々で約0.9~1.2mとなっています。
H鋼の設置には、オーガーで削孔し、セメントミルクを入れて建て込む方法を用いました。
4mのH鋼を3本、プレートとボルトで接合し、1本あたりの長さを12mにしています。
合計7本を建て込み、H鋼の間に木矢板を入れる6スパンの土留めとしました。

木矢板を入れる前にH鋼の溝を清掃
H鋼を建て込んだ後は、セメントミルクの硬化を待つために予定していた期間を置き、掘削と木矢板の設置に進みました。
掘削すると、木矢板を差し込むH鋼の溝にも、固まったセメントミルクが付着していました。
そのままでは板を入れにくいため、邪魔になる部分をハツって取り除いています。
作業前は「削るのに時間がかかりそうだな」と思っていましたが、実際には予想よりも簡単に削れました。
電動工具によるハツリと、ハンマーなどを使った手作業を、半々ほどで使い分けています。
なお、削りやすかったという感触だけで、地中のセメントミルクの強度やH鋼を支える効果まで判断できるわけではありません。
約1mずつ掘削しながら木矢板を設置
今回の現場では、上から約1mずつ掘削し、その都度H鋼の間へ木矢板を入れていきました。
見え高約4mまで、一度に掘ってから板を入れたわけではありません。
木矢板の設置と裏込めを終えてから、次の約1mを掘削する。 この工程を繰り返して、徐々に掘り下げています。
作業の流れは、次のとおりです。
- 上部から約1m掘削する
- 掘削した範囲へ木矢板を入れる
- 木矢板の背面へ裏込めを入れ、締め固める
- 周囲の状態を確認し、次の掘削へ進む

※約1mという掘削量は、今回の現場での施工記録です。すべての現場に共通する施工基準ではありません。
厚さ35mmの木矢板とセメントを混ぜた裏込め
木矢板には、厚さ約35mm、幅約200mmの杉板を使用しました。
H鋼の間隔に合わせて板の長さを調整し、掘削した範囲へ順番に納めています。
木矢板の背面へ裏込めを入れる
木矢板と背面地盤の間には、掘削土とセメントを混ぜた裏込め材を入れました。
材料はスコップで混ぜ合わせ、隙間へ詰めた後、大ハンマーで叩いて締め固めています。
今回の現場では、胴縁や釘による木矢板の追加固定は行わず、背面に裏込めを入れて納めました。

※厚さ35mmの板や、今回の固定・裏込め方法を、ほかの現場にもそのまま適用できるという意味ではありません。本記事では、この現場で実施した内容として紹介しています。
排水設備用の塩ビパイプを先行設置
木矢板から出ている塩ビパイプは、土留めの背面に排水設備を設けるため、あらかじめ入れておいたものです。
土留め施工後の排水工事に備え、木矢板の設置に合わせて必要な位置へ通しました。
最初の2スパン施工後、上部地盤に約1cmの開きを確認
施工中、機械でH鋼に軽く力が加わると、しなるように動く様子が見られました。
さらに、最初の2スパンの木矢板を施工した翌日、上部の地盤に約1cmの開きが生じていることを確認しました。
隣地には大きな蔵が建っていたため、「このまま進めて何かあっては大変だ」と感じました。
そこで、残りのスパンの作業を進める前に、H鋼の足元へコンクリートを追加で打設することにしました。
今回の追加対策のきっかけは、施工翌日に確認した地盤の変化でした。
H鋼の地中部分に補強コンクリートを追加
地盤の開きを確認した後、H鋼の周囲を、当初の掘削底からさらに約3m掘り下げました。
見え高が約4mだったため、H鋼の上端から約7m下がった位置まで掘削したことになります。
掘り下げた部分の底へ、H鋼を囲むように生コンクリートを打設しました。寸法は、平面が約500×500mm、高さが約1mです。
コンクリートより上の部分は、掘削した土で埋め戻しました。

H鋼を1本飛ばしにして2日間に分けて施工
この追加工事は、H鋼を1本飛ばしにして、2日間に分けて行いました。
後日、残りの土留め作業を進めた際には、それまで見られたH鋼の動きは、目視では確認されなくなりました。
ただし、動きが見られなくなったことと、構造上の安全性が確認できたことは別です。
今回の追加対策は、過去の施工経験をもとに自分の判断で行ったものです。当時は施主などへの事前相談をしておらず、その点は振り返っての反省点です。
※ここで紹介する寸法や施工順序は、今回の現場の記録であり、補強方法の推奨ではありません。異常を確認した場合の対応は、自己判断だけで進めず、設計者や工事責任者などと協議することが重要です。
残りのスパン施工後の地盤補修と雨養生
追加コンクリートの打設後、残りのスパンで掘削と木矢板の設置を進めました。
その際、上部地盤に約5mmの開きが生じた箇所がありました。
これは、最初の2スパンで確認した約1cmの開きとは別の箇所です。最初の隙間が5mmに縮まったという意味ではありません。
上部の土にセメントを混ぜ、表面を均してから大ハンマーで叩き、締め固めました。
全体をブルーシートで覆って雨養生
補修後は、土留め周辺の露出した地盤をブルーシートで広く覆いました。
地盤の隙間や木矢板の背面へ、できるだけ雨水が入らないようにするためです。

シートを掛けた後も毎日の確認を続け、L型擁壁の施工と埋戻しを進めました。
その間、確認した範囲では、隙間のさらなる広がりや沈下は見られませんでした。
土留めは施工後も毎日確認する
今回の現場で大切にしたのは、作業の区切りごとに様子を見ることと、施工後も毎日の確認を続けることです。
最初の2スパンを施工した翌日に地盤の開きに気づいたことも、追加対策を考えるきっかけになりました。
確認する際は、H鋼や木矢板だけでなく、背面の地盤や雨養生にも目を向けます。
- 地盤の隙間が広がっていないか
- 新しいひび割れや沈下がないか
- H鋼や木矢板に動きがないか
- 雨水が背面へ入り込んでいないか
- ブルーシートがずれたり破れたりしていないか
大切なのは、「昨日と比べて何か変わっていないか」という目で見ることです。
一度確認して問題がなかったからといって、その後も同じ状態とは限りません。
施工を進める間も、土留めを設置した後も、小さな変化を見逃さないよう確認を続けました。
埋戻しに合わせて上部の木矢板を撤去
土留めの前面にL型擁壁を施工した後、埋戻しの進み具合に合わせて、上部の木矢板を撤去しました。
同じ現場で施工した重力式擁壁とL型擁壁は、天端の高さをそろえています。
木矢板を撤去したのは、その共通の天端から約1m下がった高さまでの上部部分です。
それより下の木矢板は撤去せず、地中に残しました。

※埋め戻し・転圧状況
H鋼の上端は擁壁の天端より約150mm低い位置となり、最終的には重力式擁壁のコンクリート内に隠れる納まりです。

別現場の写真で見る土留めの全体像
大東市の現場では、木矢板を設置した後の全体写真が残っていません。
そこで、土留めの形が分かる参考として、寝屋川市で施工した同様の土留め写真を掲載します。

DCP PHOTO
※写真は別現場の施工例です。この記事で紹介した大東市の現場とは、施工条件や寸法が異なります。
まとめ|土留めは施工後の確認まで大切に
今回は、L型擁壁の施工に伴って行った、H鋼と木矢板による土留め工事を紹介しました。
約1mずつ掘削と木矢板の設置を繰り返し、見え高約4mまで施工しています。
途中で地盤の開きを確認したため、コンクリートの追加打設を行いました。その後も上部地盤の補修、ブルーシートによる雨養生、毎日の確認を続けました。
この現場で改めて感じたのは、「施工して終わり」ではなく、小さな変化を見逃さずに確認を続けることの大切さです。
この記事の寸法や施工方法は、あくまで一つの現場の記録です。
根入れが深いことや、目視で動きが見られないことだけで、安全性を判断することはできません。現場条件に応じた設計・検討と、異常を確認した際の関係者との情報共有が欠かせません。