施工・現場ノウハウ

グリシートの貼り方|擁壁での縦張り・横張りと施工の流れ

擁壁の背面に貼る、透水マット「グリシート」。

今回は、大東市の現場を例に、下地の清掃から固定金具の取り付け、シートの貼り付けまでを写真とともに紹介します。

私が現場で使い分けている縦張り・横張りの理由や、止水コンクリート・浸透砕石を施工した箇所についてもまとめました。

埋め戻すと見えなくなる部分だからこそ、継ぎ目や端部の納まりも確認しながら施工しています。

擁壁背面にグリシートを縦張りし、下部に横張りを施工した全景

 

※この記事は、実際の現場で行った施工の記録です。施工にあたっては、使用する製品の施工要領と設計図書を確認してください。

 

グリシートとは? 擁壁の背面に貼る目的

グリシートは、擁壁の背面に設置する透水マットです。

土の中から入ってくる水を受け、擁壁の水抜き穴へ導くための排水経路をつくります。

内部には水を通すための芯材があり、その表面をフィルターで覆った構造になっています。タキロンシーアイシビル株式会社

施工では、シートの継ぎ目や端部まで丁寧に納めることを意識しています。

今回の現場では、専用の固定金具「CMファスナー」を使用して取り付けました。次から、実際の施工の流れを紹介します。

 

施工前の準備|壁面の清掃と墨出し

まずは、グリシートを取り付ける壁面を清掃します。

今回の現場では、ブラシなどで軽く掃き、表面に付着した土やほこりを落としました。

グリシートを取り付ける前の擁壁背面と底盤

清掃後は、シートや固定金具の取り付け位置を決めるために「墨出し」を行います。

墨出しとは、施工する位置の目印となる線を付ける作業です。

先に基準となる線を付けておくと、位置を確認しながら取り付けを進められます。

擁壁背面に墨出しを行い、グリシート固定用のCMファスナーを取り付けた状態

※写真は、墨出し後にCMファスナーを取り付けた状態です。

CMファスナーを取り付ける

墨出しした位置に合わせて、グリシートを固定する「CMファスナー」を取り付けます。

CMファスナーは、台座からピンが突き出した形の固定金具です。台座を接着剤で壁面に固定し、そのピンにシートを差し込んで取り付けます。

擁壁背面に墨出しを行い、グリシート固定用のCMファスナーを取り付けた状態

メーカーの施工要領では、CMファスナーの取り付け数量を1㎡あたり10個以上としています。配置は、使用するシートと張り方に応じた施工図に合わせます。tc-civil.co.jp

接着後は、すぐにシートを取り付けず、接着剤が固まるまで待ちます。

今回の現場では、記憶では半日ほど時間を置いてから、シートの取り付けへ進みました。

大切なのは、経過時間だけで判断せず、ファスナーが確実に接着していることを確認することです。

※メーカーの施工要領では、接着強度を確認する目安を夏場で約3時間、冬場で約16時間としています。「半日待てばよい」と一律には判断せず、使用する接着剤の条件と現場の気温に合わせて養生します。

 

水抜き穴に保護部材を取り付ける

グリシートを貼る前に、擁壁の背面側から、水抜き穴に専用の保護部材を取り付けます。

今回の現場で使用したのは、写真の「水抜きキャップ」です。

擁壁背面の水抜き穴に専用の水抜きキャップを取り付けた状態

この部材には、水抜き穴を通してグリシートが傷つけられるのを防ぐ役割があります。メーカーの施工要領でも、シートを貼る前に保護ネットや保護部材を設置する手順が示されています。www.tc-civil.co.jp

シートを貼ると隠れてしまうため、貼り付け前に取り付け忘れがないか確認します。

 

補助フィルターで端部を納める準備をする

グリシートを切断すると、切り口に内部の芯材が露出します。

その部分から土砂が入り込まないように、端部を覆うための「補助フィルター」を取り付けます。

補助フィルターは、シート本体とは別に用意する帯状のフィルターです。今回の現場では、端部を覆えるように接着してから、グリシートの貼り付けを進めました。

シートを貼り終えたときに、切り口がフィルターで包まれるよう準備しておくのがポイントです。

メーカーの縦張りの施工要領でも、上端部を補助フィルターで覆い、土砂の流入を防ぐ処理が示されています。www.tc-civil.co.jp

なお、製品の端から伸びているフィルター部分は「耳」と呼ばれます。

本体に付いているのが「耳」、別に取り付けるのが「補助フィルター」**と考えると、区別しやすくなります。

 

グリシートを縦に貼る|下部には横張りを入れる

高さのある擁壁では、私はグリシートを縦方向に貼っています。

メーカーの縦張りの施工要領でも、最下部には横張り用のシートを入れる方法が示されています。

擁壁背面にグリシートを縦張りし、最下部に横張り用シートを取り付けた状態

まず、下部の横張り用シートを、フィルターの「耳」が上を向くように取り付けます。

次に、必要な長さに切った縦張り用シートを並べ、下部のシートと芯材同士を突き合わせます。

厚みのある芯材同士をつなぎ、その接続部分をフィルターの耳で覆う納まりです。

下部に横張りを入れることで、縦に並べたシートの下端を、横方向に連続する排水材へつなげられます。

取り付けには、あらかじめ接着したCMファスナーを使います。

シートをピンに差し込み、押さえ金具のスプリングワッシャーを取り付け、ピン先を折り曲げて固定します。

接続部分は、耳をワッシャーで押さえる箇所や接着する箇所を施工要領に合わせて処理し、土砂が入り込まないように納めます。

 

高さが低く、横に長い擁壁では横張りを使う

私は、高さのある擁壁では縦張り、高さが低く横に長い擁壁では横張りを使い分けています。

高さの低い擁壁の背面にグリシートを横方向に取り付けた状態

低い擁壁に合わせて短く切り、縦に並べて貼る場合、私が作業していて気になるのは次の点です。

・切断や取り付けの回数が増え、時間がかかる
・継ぎ目が増えるため、隙間ができないよう確認する箇所も増える
・短く切ったシートに巻き癖が残り、貼り付けにくいことがある

グリシートはロール状で梱包されているため、広げても丸まろうとする癖があります。

特に短く切ったものは、押さえながら位置を合わせる作業が手間に感じられます。

横張りなら、壁の長さに沿って広げながら取り付けられるので、こうした現場では作業を進めやすいと感じています。

ただし、これは私が現場で感じている使い分けの理由です。

メーカーにも横張りの施工方法がありますが、「低い擁壁なら、縦張り用の製品をそのまま横に使ってよい」という意味ではありません。

使用する製品に対応した張り方と、継ぎ目・端部の処理方法を確認して施工します。

 

横張りは下から上へ取り付ける

メーカーの横張り用製品(セットバック型)では、下段から上段へ順番にシートを取り付けます。

まず、壁側のフィルターの耳が上を向くように、下段のシートをCMファスナーへ差し込みます。

続いて上段のシートを合わせ、芯材同士を突き合わせます。

継ぎ目では、フィルターの耳を施工要領に示された位置に重ね、スプリングワッシャーで押さえて固定します。

ここで大切なのは、厚みのある芯材と、継ぎ目を覆うフィルターの耳を区別することです。

芯材同士は突き合わせ、フィルターの耳で接続部分を覆うことで、土砂が入り込まないように納めます。

最上部・最下部や左右の端も、耳の折り返しや補助フィルターを使い、切り口が露出しないように処理します。

横方向に貼る場合も、シートを並べて固定するだけではなく、継ぎ目と端部まで仕上げて完了です。

 

グリシートの上端は擁壁の天端から下げて納める

グリシートは、擁壁の一番上まで貼るわけではありません。

メーカーの施工要領では、擁壁の天端から30〜50cm下がった位置をシートの上端としています。

「天端」とは、擁壁の一番上の面のことです。

今回の写真の箇所では、天端から約30cm下げた位置に納めました。

擁壁の天端からグリシート上端まで約300mm下がっていることを測定した状態

上端の切り口は、補助フィルターなどで覆い、土砂が入り込まないように処理します。

高さだけでなく、端部の処理まで確認してから埋め戻しへ進みます。

 

擁壁下部に止水コンクリートを打設する

今回の現場には、グリシートの下部に止水コンクリートを施工した箇所があります。

写真は、現場で「タイプ4.7」と呼んでいた擁壁の施工状況です。

この箇所では、壁面からの幅を約500mm、厚さを約50mmとして打設しました。

擁壁背面の下部に打設した止水コンクリートの幅約500mmを確認している状態

幅は、壁面から手前に向かう寸法です。コンクリートの厚さとは異なるため、写真を見るときも分けて確認してください。

メーカーの一般仕様の図には、止水コンクリートの幅300〜500mm、厚さ50〜100mm程度の納まりが示されています。

ただし、設置の要否や寸法は、現場の設計図書や適用する施工要領に合わせて確認します。

今回紹介している寸法は、この現場で施工した一例です。

 

止水コンクリートの上に浸透砕石を入れる

止水コンクリートを施工した箇所には、その上に排水用の砕石を入れました。

ここでいう「浸透砕石」は、水を通す層をつくるために使用した砕石のことです。

グリシートの下部を土側から覆うように、壁に沿って施工しています。

擁壁背面の止水コンクリート上に施工した浸透砕石の幅と高さを確認している状態

この箇所では、次の寸法を確認しながら施工しました。

・壁面からの幅:300mm以上
・止水コンクリート上面からの高さ:500mm以上

「幅」は壁から手前への寸法、「高さ」は止水コンクリートの上面から上への寸法です。

メーカーの一般仕様では、高さ3mを超え5m以下の対象擁壁に透水マットを使用する場合、下部水抜き穴の位置に、厚さ300mm以上・高さ500mm以上の砂利または砕石の層を、擁壁の全長にわたって設けるとされています。

必要な施工範囲は、設計図書と適用する施工要領で確認します。

砕石を入れる際も、グリシートや端部のフィルターを傷つけたり、ずらしたりしないように注意します。

 

今回の施工にかかった日数と人数

今回の現場では、清掃から止水コンクリートの打設まで、2人で約1日半かかりました。

作業量としては、合計約3人工です。「人工」は、1人が1日作業する量を表します。

含まれる作業は、次のとおりです。

・壁面の清掃
・取り付け位置の墨出し
・CMファスナーの設置
・端部の補助フィルターの接着
・グリシートの貼り付け
・止水コンクリートの打設

浸透砕石の施工や埋め戻しは、この日数には含めていません。

作業時間は、施工面積や壁の高さ、足場の状況、接着剤の養生時間などによって変わります。

今回の日数は、この現場での施工記録として参考にしてください。

 

まとめ|埋め戻す前に、継ぎ目と端部まで確認する

今回は、大東市の現場を例に、グリシートの取り付けから、止水コンクリート・浸透砕石を施工した箇所まで紹介しました。

私は、壁の高さや長さに応じて、縦張りと横張りを使い分けています。

どちらの張り方でも、気を配るのは固定と継ぎ目、端部の納まりです。

埋め戻す前には、次の点を確認します。

・固定金具がしっかり取り付いているか
・継ぎ目のフィルターがめくれていないか
・端部の切り口が露出していないか
・シートに破れやずれがないか

埋め戻しの際も、せっかく取り付けたシートを傷つけたり、ずらしたりしないように作業を進めます。

完成すると見えなくなる部分だからこそ、見えるうちに確認しておくことを大切にしています。

施工する際は、現場の設計図書と、使用する製品・張り方に対応したメーカーの施工要領を確認してください。

参考資料:タキロンシーアイシビル「グリ・シートKPタイプ」

 

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